Q
開発経緯の経緯を教えて下さい。

工藤今回のプロジェクトは奈良県のプロポーザルに森トラストが選定されスタートしたものです。公募当時、奈良県内のホテル客室数は全国的に非常に少ないという課題がありました。観光する場所が豊富なのに泊まる場所がないということは、その分滞在時間が短いことになるので、消費が生まれず地域にお金が落ちないですよね。今回の事業はそういった地域課題へのひとつの方策と打ち出されたものでした。
森トラストとしては既に『JWマリオット・ホテル奈良』という大型ホテルの進出を決定し奈良に新たなマーケットを創出していこうと考えていた中だったので、今度はスモールラグジュアリーにも挑戦しようということになりました。
Q
森トラストが選ばれたと思う理由は
なんだと思いますか?

工藤単純に泊まって終わりではなく、滞在型観光が実現できるような提案をしたからではないでしょうか。県が公募にあたり求める水準に対し、既存建物の活用や地場の農産品の発信といったプラスアルファの要素を付け加えたことで、「滞在することで地域の価値が分かるものを作る」という思いが伝わり、評価に繋がったのだと考えています。
Q
お客さんの反応はどうですか?

片岡元々マーケットが無いところからのスタートで不安がありましたが、良い水準の稼働率を取れている状態のため、県内外の方に評価していただけているなと思います。
星村東大寺や興福寺、春日大社をはじめとした世界遺産があることから、外国からも多くの方が来訪されていて、その受け皿を提供できたのだと感じますね。
片岡確かに、あの立地に、ラグジュアリークラスでありながら、客室露天風呂含め「日本の魅力」が詰め込まれたスタイルのホテルは中々無い状況だったので、今までに無かった体験をしていただけていると思います。
星村その通りだね。加えて、単に新しいホテルを作ったのでは無く、「歴史ある既存建物を活用している」という点、その軌跡も含めて施設の売りに出来ている、というのが評価されている理由なのではないでしょうか。
Q
大変だったことはありますか?

星村やはりコロナ禍が一番大変でしたね。2017年にプロポーザルで森トラストが選定され計画がスタートし、2020年末には施工者も決まるなど、順調に進んでいた最中の出来事でした。設計も一時中断となり、1年間は計画の見直し期間に充てられましたね。事業性を見直す中で、計画を中止にした建物もありましたが、温泉を導入するなど商品価値を高めるための工夫も生まれました。関係者全員で試行錯誤しながら、事業を軌道修正していった期間は一つの転換期でした。
工藤結果的にかなり見直し、修正が入りましたよね。計画を変えていく中では、関係各所への変更内容の説明や厳しい規制をクリアできるかなど、トライアンドエラーの繰り返しだったように思います。
星村着工してから、骨組みである鉄骨躯体が立ち上がるのはあっという間でした。後戻りはできないことを実感し「これで完成まで進めてゆくんだ」と気持ちが引き締まりましたね。
Q
吉城園の最大の魅力を教えてください。

星村奈良公園内にホテルがあるということ自体、唯一無二の特別感があり、大きな魅力だと感じます。
また、各客室は間口をたっぷりと取ってベッドを庭向きに配置した計画としていたり、露天温泉やビューバスから庭園を楽しめるなど、庭園も含めた商品づくりをしています。さらに、既存建物である旧知事公舎など古い建物の良さを活かしながらも、インテリアとして、シルクロードの終着点を意識した異国情緒や新しさも取り入れたデザインとしている点など、奈良や吉城園の歴史・特徴を最大限に活かし、魅力が詰まった施設になっています。
工藤今回の事業が三方良しのプロジェクトであることだと思います。行政にとっては、活用できずに荒れていた土地を綺麗にすることができ、かつ宿泊施設を誘致することで地域の観光消費額を上げることにつながる。事業者である森トラストにとっては、官民連携というスキームで星村さんも触れたような希少な立地でのホテル整備を実現できたことが挙げられます。そして最後に、地域の方々。歴史ある建物である『世尊院』をカフェに生まれ変わらせ、近隣の方々にも広くご利用いただける施設としたことで、地元の方からも非常に喜んでいただけました。

片岡私は、「奈良に泊まる」という動きが生まれることが魅力かと。これまで観光客の方々は、利便性を求めて大阪、京都に泊まっていましたが、ポテンシャルで見れば奈良は2都市と同等。奈良県にも人流を作れば、大阪、京都に並ぶもう一拠点となりうるし、消費が生まれることで経済が回り、施設維持に繋がるというのは、この先の未来を考えても非常に良いことだと考えます。そこに一石投ぜたというのは、大きな影響をもたらせたのではないですかね。
工藤確かに『JWマリオット・ホテル奈良』の進出を決めた時には業界的にも「なぜ奈良なのか?」という雰囲気でしたが、結果的に他の事業者さんもマーケットが存在することに気がついて参入されている今の流れを見ると、奈良に着目したのは間違いでは無かったと思いますね。

Q
森トラストらしさや、
翠ブランドの魅力を感じることは?

星村翠ブランドとして、ゲストに対して一定のクオリティの施設やサービスが提供される安心感を担保できることでしょうか。また、ブランド力があるからこそ、森トラストとしても、利用する方々からしても、双方が安心できると思います。
工藤沖縄の伊良部島、京都嵐山にも翠ブランドホテルがありますが、「同じブランドだけど地域によって異なる個性・良さ」が盛り込まれているのは、ラグジュアリーコレクションであり翠ブランドであるからこそ実現していますよね。
星村そうだね。ラグジュアリーコレクションというブランドは、その土地固有の要素や良さをホテルに落とし込むのがコンセプトだから、「その土地らしさ」を感じられるというのが翠の一つの魅力にも繋がっています。自然を活かし、その土地の良さを発信していく施設としての役割を果たせるように、という思いもブランディングには取り込まれています。
片岡二人が言う通り、「クオリティの担保」と「固有性」がいい塩梅で組み合わされていると思う。やっぱり森トラストの特徴は、備品に至るまでの細部にこだわること。ラグジュアリーコレクションブランドでは縛りきれないところまで縛ってるのが森トラストのこだわりであり、「ラグジュアリーコレクション×翠ブランド」の良さだと思います。
Q